ゼロの初心者状態から始める、機械設計の勉強方法

機械設計

「完全に初心者状態から機械設計を学ぶにはどうすれば……?」 というお問合せをよく頂きます。
私も同じような状態から手探りで始めたので、効果があった事をまとめました。

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この記事の対象

「完全に初心者状態で機械設計部署に配属されたが、どう勉強すれば……?」という方に向けて書きました。
私自身も大検の高卒レベルの学力でいきなり現場にぶっこまれて足掻いてきました。正攻ルートではありませんが、ひとつの経験談として読んで頂ければと思います。

コツは、学習分野を切り分けること

「機械設計」と聞くと巨大な学問を相手にする気がして、途方にくれるかもしれません。
しかし「あくまで自分の仕事に必要な技術」と考え、必要なスキルを分解すると、現実的にやるべきことが見えてきます。

ここで、汎用的に必要な項目をざっくり一覧に挙げました。

  1. 知識の部
  2. 技能の部
    • CAD/製図
    • 設計の実践
    • 組立スキル
  1.  

このリストは全てを網羅しているわけではありませんが、ゼロからの初学者の場合はまず基礎体力としてつけておくと応用的に役に立ちます。

業界や工程によって必要なスキルは変わってきますし、浅く広く手早く勉強して、都度深堀りしていけば良いんです。

例えば以前、私がレーザー関連の装置開発チームに配属された際は、光学の知識なんてサッパリない状態でした。
仕様や実験の理解に必要なので本を買って勉強しましたが、勉強に抵抗はありませんでした。リストに挙げた基礎知識の勉強により、学習の習慣が身についていたからです。

さて、以下に具体的な学習方法を説明します。

「知識の部」は、資格試験をペースメーカーにする

働きながら学ぶのは時間の確保や気力の維持が厳しく、大変です。
私は当初分厚い教科書を1ページ目から学ぼうとしていましたが、いつまで経っても進みませんでした。

そこで、資格試験を活用すると勉強が進みます。
「資格試験の合格」は一種のプロジェクト。モチベーションを強制的に維持する仕組みがそろっています。

理由は以下の通りです。

  • 納期(試験日)があるので、自然に計画を組める(組まざるを得ない)
  • 受験料を払ってしまったので、必死になる。
  • 出題範囲が決められているので、俯瞰的に効率よく勉強できる

おすすめ試験は、機械設計技術者試験3級。
受験資格がないので、未経験者でも気軽に挑戦できます。
四大力学から加工知識、製図まで効率的に勉強できる良い試験です。

その他資格について

「技能の部」は、なんとか手を動かす機会をつくる

「技能の部」は慣れや経験を積む必要があり、環境に左右されてしまうのは否めません。
機会に恵まれず苦戦することもありますが、なんとか自分で実践し手を動かす機会を作ってみて下さい。

CAD/製図

CADは図面作成のみならず、設計の思考ツールとしても必要不可欠です。
実務で使う機会が多いと自然に慣れてきますが、足りない場合はこんな方法があります。

資格試験を受ける

公的資格の技能検定は、二次元図面の製図訓練にぴったりな試験です。

組立図が課題図として与えられて、そこから指示された部品の図面をCADで描く」という実務的な内容。

図面を読んで描く練習もできるし、JISのルールにも慣れられるし、CADの訓練もできる試験です。

ただ受験資格があったり情報が少なめなのがネックですが、要綱を読んで条件があえば挑戦を検討してみて下さい。

ポリテクで学ぶ

受講料はかかりますが、ポリテク(都道府県の職業訓練施設)で2D/3D CADや製図を学べます。
在職者訓練として、平日の短期間もしくは土曜日に講座が開講されています。

私は以前、工作機械(旋盤・フライス盤)の初心者講習を受けたのですが、一人一台実機に触れられて体感できたことはとても有意義でした。

都道府県により開催講座は違いますが、受講すればその場で質問もできるので便利です。

▼ 全国のポリテク一覧

職業能力開発促進センター(ポリテクセンター) |独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、高齢者の雇用の確保、障害者の職業的自立の推進、求職者その他労働者の職業能力の開発及び向上のために、高齢者、障害者、求職者、事業主等の方々に対して総合的な支援を行っています。

会社と交渉する

高価なCADや特殊ツールだと、自分だけで何とかするのは得策ではありません。
そんな時は、会社にかけあって練習の機会を設けてもらったり、講座費用を出してもらうべく交渉するのも手です。

私の場合、業務に必要な特殊ツールなのにマニュアルもなく、知っている人が秘伝のタレとして取り込んでしまうような環境におかれたことがあります。
困ったので、粘り強く上司に相談してベンダーの講座を受講する機会を頂きました。

設計の実践

いくら知識を蓄えても、いざゼロからモノをこしらえようとすると手が止まってしまいます。
省スペースにレイアウトしたり、うまいこと市販品を流用したり、コストを押さえたりと慣れが必要です。

職場で経験を積むのが一番良い(お金を稼ぎながら勉強できるので)ですが、なかなか機会がない場合は個人的に小規模な「一人プロジェクト」を考えてみるのも面白いですよ。

自分で何かを工作するんです。考えを具現化する筋トレになります。

自分で仕様をきめ、計画し、設計して加工して、組み立てて……と実践で得られることはとても多く貴重です。

今は趣味の工作なら無償で使える高機能な3D CADもあります。

組立

もしも職場の製品が触れられる環境にあるなら、ぜひ触ったり組み立てに参加してみて下さい。

工具を使った組立作業に慣れる……という趣旨もありますが、既製品の設計思想や使い心地を、肌で感じて生きた知識を蓄えるのが大きな目的です。
また、図面で見ると線だらけで複雑に感じても、現物を見れば自然に腑に落ちます。

初心者が触っても仕方がない、と思うかもしれません。しかし「自分が触る」ことに意義があります。
慣れた人間なら気にならない事でも、新人が取り組むとエンドユーザーとしての新鮮な感覚で見られて改善につながる場合があります。

細かい例ですが、壁面の部品のネジを不注意で全部外してしまったことがあります。
落下する!!とヒヤッとしましたが、部品に付けておいた爪のおかげで部品はその場にとどまっており、事なきを得ました。
設計時は「こんな事する奴おらんやろw」と思っていた事を、まさか自分がしていましました。設計時の想定で結果が大きく変わると体感しました。
こうやって実際に手を動かしていると、設計時に当事者として身が入ってきます。

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