材料力学で必ず出くわす梁(はり)の問題。
分布荷重の簡単な解き方を説明します。
積分を使いますが、公式通りの計算なので難しくはありません。
この記事の対象。勉強で、つまずいている人
この記事は「資格試験問題を解くためだけの作業マニュアル」を目指しています。
「勉強を始めたばかりだが、なかなか参考書だけでは理解がしづらい」
なんていう方へ。
少しでもやる気を出して頂けるとっかかりになればいいな、と思います。
詳しい式の導出や理論は、書籍でじっくり勉強してみて下さい。
さて、本題に入ります。
例題:三角分布荷重
単純支持梁(はり)の全体に、三角形に分布した荷重がかかっています。
下記の図を描いてみましょう。
- BMD(曲げモーメント図)
- SFD(せん断力図)

解答
まずは、解答から先に貼っておきます。
これから、詳しく解き方の手順を説明していきます。

解き方の流れ
解き方の基本的な流れを、マニュアル化してみました。
下図をご覧下さい。

では、例題をこのマニュアル通りに解いていきます。
手順0. 考え方のとっかかり
計算に入る前に、考え方を少し説明させて下さい。
分布荷重なので、距離によって荷重が変わっていてややこしい感じがしますね。
でも、分布の合計を「集中荷重のP」として扱うとシンプルに考えられます。

手順1. つり合いの式を立てる
この梁には、分布荷重だけではなく反力も発生しています。
(荷重とは逆向きの力)
反力を求めないと、後々SFDやBMDが書けません。
ですので、この梁の関係を式にしておきましょう。
式の立て方は、基本の約束事をベースに立てるだけです。
★ 詳しくは、反力の記事でも説明しているのでご覧ください。
約束事は、下記3つ。
- 水平方向の力の和は0(ゼロ)である
- 垂直方向の力の和は0(ゼロ)である
- ある点まわりのモーメントの和は0(ゼロ)である
というわけで、こんな感じになります。

この時点ではPとXGが不明。
これがわかれば、反力が求まることがわかりました。
手順2. 分布荷重の式を求める
分布荷重は、単位距離あたりの荷重です。
等分布荷重とはちがって、各地点の分布荷重はかわっていきます。
ということは、各地点の分布荷重は距離の関数です。
下図をみて下さい。
梁(はり)とか支点とか忘れて、分布荷重だけを見ると・・・
グラフですね。
分布荷重を式にするとこうなります。

手順3. 分布荷重の合計を求める
分布荷重の合計を求める理由は、
「集中荷重として扱うことができるから」です。
分布荷重の合計(面積)が、集中荷重の大きさです。
「このグラフの、色をつけたエリア」の面積を求めないといけません。
どうやって面積を出しましょうか?
ここで積分を使います。
下図をみて下さい。

では、ここからどうやって面積の値を求めるのか?
これは展開する手順が決まっているので、その通り演算するだけです。
下図を見て下さい。

これで、分布荷重の合計がでましたね。
Lの2乗ということは、1[N]です。
普通に三角形の面積の公式に当てはめて計算しても、結果が一致します。
高校数学の数学2の範囲ですので、参考書も豊富です。
すっかり忘れている方は、おすすめ書籍をご参考にどうぞ。
手順4. 分布荷重が、集中荷重としてかかる位置を出す
手順3.で、集中荷重(分布荷重の合計)を出しました。
では、その集中荷重はどこにかかるのでしょうか?
分布荷重範囲の図心位置にかかります。
それは公式で簡単に出せます。
下図を見て下さい。

この式の分子の意味は、
「細かく区切った区間のモーメントを足し合わせる」ということです。
そして分母は、先ほど説明3.で出した分布荷重の合計(P)です。
モーメントを荷重で割ると、距離がでますね。
それがXGです。
積分の過程を書いておきます。

手順5.反力を求める
PもXGも求まりました。
これでやっと反力が出せるようになりました。
手順1で作ったつり合いの式に代入して、求めます。

動画でも解説しています
分布荷重の梁の反力の求め方は、動画でも解説しています。
動画では、二次曲線の分布荷重の例題です。
手順6-1. せん断力の式Sxを立てる
せん断力の式の立て方は、一言でいうと
「任意の位置で区切り、片側で式を立てる!」
正負の取り方に注意してください。
(詳しくはSFD記事で解説しています)
- 区切りの左側では上方向が+(プラス)、下方向がマイナス
- 区切りの右側では下方向+(プラス)、上方向ががマイナス

手順6-2. 曲げモーメントの式Mxを立てる
曲げモーメントの式の立て方は、一言でいうと
「任意の位置で区切り、仮想の支点とみなしてつり合いの式を作る!」
正負の取り方に注意してください。
(詳しくはBMD記事で解説しています)
曲がる方向が受け向きならプラス、下向きならマイナスです。

手順7. グラフを描く
あとは式を元にプロットするだけです。
もう一回、回答図を貼っておきます。

参考文献
- 萩原 芳彦(1994) 『機械力学の基礎と演習』 オーム社, p61-67
- 中島 正貴(2005) 『材料力学』 コロナ社, p67-83
- 岩瀬 重雄(1994) 『高校数学公式活用事典』 旺文社
おすすめ書籍
微積分
工学書と違って、高校数学は参考書が豊富。
ありがたい半面、選ぶのに時間がかかります。
そこでお勧めしたいのがこの本。微積分は、まずはこの本で私は勉強しました。
本書は、微積分の演算方法が丁寧に解説されています。
普通は端折られるような計算過程もくどいくらい書かれているので、とってもうれしい。
数学1Aが怪しいレベルから始めた私でも詰まることがありませんでした。
演算ができるようになるだけで、他の工学書を読むのがぐっと楽になりました。
材料力学
この本は材料力学ではなく、機械力学の本です。
でも梁の問題も解説項目にあります。意外ですが、分かりやすい。
とくに分布荷重の解説は丁寧でした。
ただし、BMDやSFDの解説はありません。
例題が豊富なので、材料力学に限らず過去問題で詰まった際に類題を探すのにも役立ちました。
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- ブラウザで材料力学のSFD・BMDがかける。SkyCiv「Free Online Beam Calculator」が便利
▼ 学習が少し進んできたら、英語の本で勉強するのも面白いです