「図面をかけるとはどんなことか」「図面をかけるようになるには」という質問を読者の方から頂きましたので、考えてみました。
「図面を描ける」ってどういう事?
具体的にはシンプルに2点だと思っています。
6W2Hが手中にあること
「図面を描ける」というのは、一言で言うと「6W2Hが手中にある」という状態だと考えています。
6W2Hとは、下記の8項目です。
- Whom(誰が使うの?)
- Where(使用環境は?)
- What(何を作る?)
- Why(使る理由は?)
- When(スケジュールは?)
- How (加工法は?)
- How much(予算は?)
当たり前のようですけど、新人が周囲から又聞きで頼まれるような仕事ってこれが曖昧だから「図面が描けない」と考えてしまうんだと思います。
自分がコントロールできないのにやらされる事ってジワジワと精神を苛みますから。
私が仕事に就いたばかりの頃、図面を描くのが嫌いでした。
原因は「自分の裁量範囲が狭すぎるから」これに尽きます。
製図やCADが苦手とかは、二の次です。
図面引いておいて!って一言で言われても、もやもやと分からないことだらけです。
だってその図面は何のために作るのか?誰が使うのか?納期はどこまで調整して良いのか?製作個数は?発注先は?
上司や先輩の依頼はその辺が指示時点で聞いても曖昧なので、どこまで自分が動いていいのかわからないんです。
だから自分を製図マシンとして割り切り、上記のような不明点は逐一聞いていました。
そうしても自分で考えろとか言って怒られるんですね~。
製図がちゃんとできること
いくら6W2Hが手中にあって立派な現物ができても、記録に残してもらわないと後の人間が困ります。
以前職場にある便利な治具をバージョンアップすることになりましたが、図面が無いんです。
社内で使うものだという事で、図面には残していないようで。
前任者が手描きのポンチ絵とメールでしかやりとりしてなくて、結局現物採寸と周囲への聞き込みで図面を作り直したことがあります。
馴染みの業者さんにずっとお願いするならともかく、将来発注先が変わる可能性もあります。
JIS規格でルールに則った図面を残しておけば、誰にでも通じる仕様書として後から利用することができます。
「図面を描ける」ようになる為には?
「図面を描ける」ようになる為に私が有効だと思ったのは、下記2点です。
とにかく自分がコントロールする!
図面にストレスを感じなくなったのは、自分の担当が出来てからでした。
細切れの依頼をこなすのではなく、ある程度のユニットを担う感じです。
「自分の裁量範囲が増えた」ことで格段に楽になりました。
情報も先輩の又聞きではなく、プロジェクトリーダーの方や調達部門と直接話をしますので、正確なスケジュールを把握できます。
そうすることで外注先に納期設定ができます。
外注先と直接話せるようになってからは、入社当初よりトラブルが減りました。
(従来は先輩経由で問い合わせろという上司指示でしたが、忙しさで留め置かれてしまうのでトラブル頻発でした)
ところで、ある日実績のない材料を使う案件がありました。
加工の外注先から探さないといけません。
そんな手さぐり状態で大変なのに「図面が描けない」とは思いませんでした。
自分の担当なので、案件の手綱を握っているからです。
「図面を描ける」ためには、仕事の手綱を握ってコントロールできる範囲を増やすのが重要です。
設計において「図面を描く」のは仕様を落とし込む一番最後の作業だと思っています。
その為の「仕様を決める」「加工に関する情報を取る」などの準備がスムーズに進まない時。
その際に「図面が描けない」と思ってしまうんだろうと感じます。
指示側のインプットが曖昧だったり、情報を共有せず取り込んでいる人間がいたり。
環境に原因がある場合もあるので、抱え込まないで心の中で逆切れして要因を探しましょうw
次工程に相談する
図面を描いていると「本当にこんな形加工できるのか?!」と不安になってきます。
設計者は加工のプロではないので、所詮一人でウンウン考え込んでも大した解決には至りません。
ある程度不明点がまとまったら、加工部門や業者の方に問い合わせをしていました。
また、加工の事じゃなく仕様上の疑問も同じです。
上から指示された仕様があっても、使う人に「こんなんで役立ちますか?」とお伺いにいったり。
先の項目とも共通しますが、一言で言うと「抱え込まない」ということです。
心強い検図と困る検図
先述のように「図面を描ける」ようになると、検図を頼まれてもできるようになってきます。
私は検図を受けるのと、するのと両方経験があります。
最後に、受ける立場で心強かった検図と、困った検図のエピソードを書いてみます。
心強い検図
6W2Hを念頭に置いた検図をして下さる方の検図はありがたいです。
図面のその向こうにある「現物」を想定して見て貰えるので心強い。
過去の加工の失敗などよりよくする為のチェックが入るので、自分では情報を取りきれなかったポイントを回収することができます。
困る検図
困るのは、目の前の「図面」しか見てくれない検図です。
私が嫌だった検図者には、やれ寸法線のバランス悪いので1mm移動しろとかフォントを変えるべきとか細かい指摘と説教が山盛りで、数時間拘束されるのです。
遅くまで残業して修正したけど、結局できあがったものには不備がありました。これは私の設計不良もありますが、あの数時間はなんだったんだろうとw
一度だけでなく、枝葉末節の数時間拘束は毎度です。
今思えばパワハラやろ!と腐せもするのですが、当時は本当に参っていました。