初めてAutoCAD を使う方へ、導入から印刷までの流れを紹介します。
この記事でごく簡単な作業をこなして、ひとまず慣れてみて下さい。
2021年5月より、AutoCAD LTに替わる「業種別ツールセットを含まないAutoCAD」の販売が開始されました。
これによりLISPや3Dが使えるAutoCADが、LTと同一価格で利用できるようになります。
従来のAutoCAD LTは、2021年6月に新規販売が終了します。
▼ 新しいAutoCADについて記事を書きました。
この記事の対象と目的
初めてAutoCAD を使う方へ向けて、書きました。
具体的には、
「自主学習や試験対策などのため、個人的にCADを導入したい方」を想定しています。
細かい作図の練習は後からいくらでもできるので、まずは操作の雰囲気を垣間見るのが目的です。
やること
この記事のゴールは、「CADを導入し簡単な図枠と絵を描いて、印刷すること」です。


導入
はじめに、導入の方法を説明します。
体験版の入手から購入まで、Autodeskの公式サイトで完結します。
アカウントを作る
ダウンロードには、Autodeskのアカウントが必要です。
もし、お持ちでなければ、以下で作ることができます。
このアカウントは、今後サポートを受けたり、ソフトの登録状況を管理する上で必要になります。
体験版で動作を確認
Autodesk製品には体験版があります。30日間使用が可能です。
購入する前に、ご自身のPCで正常に動作することをご確認ください。
下記サイトの「無償体験版のダウンロード」をクリックすると、ダウンロードの手続きを進められます。
立ち上げ
インストールが済んだら、ソフトを立ち上げましょう。
「体験版の使用を開始しますか?」という画面がでるので、「体験版を使用開始」をクリックします。
購入方法
体験版終了後も継続して使う場合は、購入手続きに入ります。
下記Autodesk社のサイトから、購入手続きを進めることができます。
(期限切れのソフトのメッセージから更新手続きに入ることも可能です)
AutoCAD LTは、利用期間の分だけ料金を支払うサブスクリプション方式です。
1ヶ月、1年、3年と期間を選べるので、各自の目的・スケジュールにあわせて購入が可能です。
諸注意
- 状態がどうなっているか不明な場合は、管理ページのサブスクリプションと契約で確認できます。
- 更に不明点がある場合は、問合せができます。サポートへの問合せページで項目を選ぶと、フォーム入力やライブチャットなどの連絡手段が表示されます。
個人的な経験だとライブチャットのレスポンスが速いので、よく利用しています。
環境を整える
ソフトをインストールしたらまずは簡単に環境を整えていきましょう。
新規作成
はじめに、図面を新規作成します。左上のロゴマークをクリックし、新規作成を選びます。
もしくは、ショートカットキーのCtrl+Nを押すと速いです。

すると「テンプレートを選択」というファイル選択画面がでてくるので、適当に.dwtファイルを選択します。自分で作ることもできます。
今回はacadltiso.dwtを選んでおいてください。
名前を付けて保存
ちなみに、新規作成後はすぐに保存しておいてください。
CTRL+shift+Sを押すと、名前を付けて保存のウィンドウが出ます。任意の場所やファイル名を指定して下さい。
そして、作業途中にはこまめにCTRL+Sで上書き保存を忘れずに。
保存するファイル種類を指定できる
名前を付けて保存時に、どのバージョンで保存するかを指定したり、DXFへ変換が出来ます。
ファイル名の下のファイルの種類という項目をクリックすると、選べます。古いバージョンを使うユーザーとやりとりがある場合は、バージョンを下げて保存することができます。

線種の設定
図面で使う線種を用意します。今回の課題図では実線しか使いませんが、通常の業務で破線などを使う場合は、追加登録(ロードと呼ぶ)する必要があります。
ホームタブ→プロパティパネルの中で、線種の一覧を確認します。
もし目当ての線種が一覧になければ、その他をクリックして、線種をロードして下さい。
▼ 二点鎖線(PHANTOM)を追加する様子です。

レイヤーの設定
次に、基本的なレイヤーの設定です。レイヤーとは、層を作って表示状態を制御する機能です。
層ごとに線種や線の太さや色を設定したり、表示/非表示を切り替えたりできます。
レイヤーは部品ごとに作る場合もありますが、この記事では線種ごとにレイヤーを作ります。
ホームタブ→画層プロパティ管理をクリックすると、管理画面が開きます。
▼ レイヤーを作る様子。名前も自由に付けられます。今回は「実線」と「寸法線」の2つです。

これで、例えばホームタブの画層パネルから「寸法線」を選んでから寸法を入れると、太さ0.15 mmの水色の線が描けます。
対象物を選択してから、レイヤを変えることもできます。
寸法スタイルの設定
寸法線の仕様を、図面を描く前に設定しておきます。
注釈タブ→寸法記入パネルの右端の矢印をクリックすると、管理画面が出ます。
そこで既存の寸法を選択して、修正をクリックし、自分好みの設定に変えて下さい。
今回設定する主な項目は、以下の通りです。
- 線種、色:Bylayer(所属レイヤーに準拠するという意味)
- 起点からのオフセット:0.5 mm(物体と寸法補助線までの距離)
- 矢印:30°開矢印
- 文字高さ:3.5 mm
▼ 寸法スタイル管理画面の様子

操作の進め方
早速作図に入る前に、操作の進め方を少し説明させてください。
コマンド欄に注目しよう
AutoCAD LTは、コマンド欄と対話しながら操作を進めます。
コマンドは、ソフト下部の入力欄に入力し、エンターキーを押すと実行されます。
例えば、線を引くならl(エル)、円を描くならcと入力すると作図機能を呼び出せます。
すると、コマンド欄には「1点目を入力」というメッセージが出るので、始点をマウスでクリックしたり、座標を入力したりして指示する……という流れです。
また、自分が今何をしているかが分からなくなったら、コマンド欄を見ると良いです。「何々を入力」のように、メッセージが表示されています。

コマンド名は、随時覚えていけばokです。公式サイトに一覧があるので、必要が出たら眺めてみて下さい。
▼ 当ブログでもよく使うコマンドをまとめた記事を書いていますので、よければご覧ください。
ESCキーを連打セヨ
慣れないうちは、指示を間違えることがあり、やり直したくなることが多々あると思います。
そんな時は、とにかくEscを連打するとよいです。
一度押すだけでは完全にコマンドが終了しないことがあるので、ダダダ!っと3回くらい連打して、コマンド欄がまっさらになるのを確認して下さい。
作図開始
これから作図開始です。図枠のサイズは下図の通りです。A4で、紙の外形から15mmオフセットして輪郭線(内枠)を描きます。

図枠の外枠の四角形を描く
四角形の作図コマンドで絵を描きます。
- コマンド入力欄に、recと入力する。
- 始点を指示。原点に一致させたいので、コマンド欄に0,0と入力する。
- 終点を指示。A4の紙サイズにしたいので、297,210と入力する。
※コマンド欄へ入力後はエンターキーを忘れずに。

輪郭線を描く
オフセットコマンドを使って、外枠の内側に、図面の輪郭線を描きます。
- コマンド入力欄に、o (アルファベットのオー)と入力する。
- コマンド欄に15と入力する。
- 基準となる外枠の線をクリック。
- 方向(図面内部)をクリック。
- Enterを押して終了。
※コマンド欄へ入力後はエンターキーを忘れずに。

中心マークを描く
lineコマンドを使って、図面の中心マークを描きます。
まずは、長辺と短辺の1セットだけ描きます。
- コマンド入力欄に、l (アルファベットのエル)と入力。
- 始点を指示。短辺の中央付近にポインタを当てて中点に印がでたら、左クリック。
- (出なければ)Shiftを押ながら右クリックすると一覧から「中点」を選べる。
- 終点を指示。@20,0 と入力する。(相対座標の指定書式です)
- Enterを押して終了。
- 長辺側も同様に行う。ただし、終点座標は@0,-20
※コマンド欄へ入力後はエンターキーを忘れずに。

中心マークを回転複写
Rotateコマンドを使って、先ほど描いた長辺と短辺の中心マークを複写します。
- 中心マークを選択する。
- コマンド入力欄に、ro と入力。
- 基点(中心点)を指示。
Shiftを押ながら右クリックして「2点間中点」を選ぶ。輪郭線の対角の頂点を2点クリック。 - 回転時に複写する事を指示。c と入力する。
- 回転角度を指示。180と入力する。
※コマンド欄へ入力後はエンターキーを忘れずに。

表題欄を書く
Rotateコマンドを使って、先ほど描いた長辺と短辺の中心マークを複写します。
- コマンド入力欄に、recと入力。
- 始点を指示。輪郭線の右下の角を左クリック。
- 終点を指示。@-105,45と入力。
- 3.の四角形を選択し、xと入力。(四角形が分解される)
- 輪郭線に重複した線を選択し、Deleteキーで消す。
※コマンド欄へ入力後はエンターキーを忘れずに。
▼ 表題欄の枠を描く様子です。今回は、中身はかかず空っぽでOKです。

中身を書く
図枠だけでは寂しいので、中になにか形状をかいておきます。今回はスピード優先で、適当に板をかきます。
板の絵と寸法記入
- recコマンドで、幅120×高さ60の四角形を描く。
- ホームタブ→画層パネルで、レイヤーを寸法線に切り替える。
- ホームタブ→注釈パネルで、長さ寸法記入をクリック。
- 寸法の始点と終点を、左クリックで指示する。
- 寸法線の位置を左クリックで指示する。

板厚を記入(textコマンドを使います)
- コマンド入力欄に、text と入力。
- 記入位置を指示。今回は適当な場所で左クリックする。
- 文字高さを指示。3.5 と入力する。
- 文字列の角度を指示。0と入力する。
- 文言を書く。t0.7と入力する。
- 改行されたら、もう一度Enterを押すと確定される。
※コマンド欄へ入力後はエンターキーを忘れずに。

印刷する
最後に印刷します。
Ctrl+Pを押すと、印刷設定画面が立ち上がります。

色々と細かく設定できますが、今回の設定項目は下記の通りです。
プリンター名 | ご使用のプリンターを選択。PDFも可能。 |
用紙サイズ | A4 |
印刷領域 | 窓→窓ボタンをクリックして、範囲を指定(図面外枠の左下と右上をクリック) |
印刷尺度 | 1:1 |
印刷スタイル | monochrome.ctb |
図面の方向 | 横 |
印刷が終わったら、定規で寸法部分を測ってみて下さい。正しく設定できていれば、表示通りの寸法(120の個所なら120 mm)で出力されているはずです。
印刷について補足
AutoCADにはモデル空間(今回作業した空間)とペーパー空間(下部のレイアウト1と書かれたタブで開く)が存在します。
図形はモデル空間描き、印刷の見た目はペーパー空間で整える……ということができます。
詳しくは、公式ヘルプをご覧ください。

ちなみに私の環境では、変換して受け渡すため、図枠含めてモデル空間にすべて描くことが多いです。
たとえば1:2の尺度がかかった図面だったら、形状を常に1:1で描き、図枠を2倍にしています。
完成
さて、これで今回の作業は終了です。お疲れさまでした。

これからの練習に役立つ資料
Web
Autodesk社のチュートリアルが、簡潔でわかりやすいです。
下記サイトにアクセスしても良いですし、ソフト右上のハテナマークをクリックして、チュートリアルやヘルプを閲覧することもできます。
書籍
AutoCADに関する本はたくさん出ているので、各自好みの本を選んでみて下さい。
私の場合は、この書籍が気に入って練習に使っていました。(買ったのはLT2013版です)
▲ 前半は製図についての説明、後半は演習課題が出題され、淡々と作図して訓練することができます。演習があると、いやでも応でも手を動かすので身に付きやすいです。
進めるにつれ、慣れてスピードも上がってくるのを実感できると思います。
書名通り機械製図に携わる方を対象としており、機械系の職種の方だったら課題が馴染みやすく実践的なのも良い点です。
参考 詳細な目次は、出版社のサイトで見られます。
おわりに
CADといえば「たくさんの機能を駆使して作図しなければ」と思われるかもしれませんが、頻繁に使う機能は限られています。
まずは少ないコマンドで、図面をトレースしたりして作図に慣れると良いです。
慣れてきて「もっと効率を上げたい。どうしようか?」と改善欲求が湧いてきたら、いろいろ調べて研究してみて下さい。