今まで転職などで、下流から上流工程まで経験した。
その中の各工程で必要だと感じたスキルは何なのか?
当時は未経験・無知識という悲惨な状態だったので手さぐり状態だったけど、
10年以上経ち、フリーにもなったのでちょっと落ち着いてふり返ってみて、役に立った本などを紹介していく。
あくまで私の観測範囲での感想なので、会社や個人による違いなんかはご容赦を。
下流工程
仕事内容
メーカーからの元請や下請け会社はたいていこの工程のはず。
OEM受託して製作までしているところもあれば、設計のみの会社もあるだろう。
構想をカタチにする詳細設計がメインなので、機構を具体的に考えてCADで図面を描いたり読んだりと図面に触れる機会が多い。
一般的に想像される「機械設計のイメージ」の風景が広がる。
私は手書きのトレーサ、図面バラシなどの下積みを経て詳細設計を担当していた。
専門的な「スキル」を叩き込んでもらえたので感謝してるけど、周りのエンジニア達は優秀な人ほど上流工程目指してメーカーへ旅立っていった。
派遣社員的に客先に常駐しっぱなしとか、しんどい割にメーカーに比べて待遇が悪かったりするから仕方がない・・・。
必要なスキル
設計・製図力
詳細設計では実務能力がないと始まらない。
未経験で始めたので毎日が試験前夜みたいなものだった(笑)
焦って本を買いあさって勉強したなかで、役に立った本を紹介する。
初心者は真似から始めるってのが、私のモットー。
知識もないのに考え込んでも時間の無駄だ。
部品図描いてる時とか、こういう場合どう表現しよう?って瞬間が必ずでてくる。
そういうときに見る、お手本だ。JIS準拠の美しい図面が記載されている。
寸法の入れ方や、狭い図面スペースでの表現方法は参考になる。
冒頭にはJISの製図規則がまとまっているから、これ1冊もっておけば助かる。
下積みを経て加工業者さんともやりとりが出来るようになったころ、お世話になった本だ。
特に旋盤やフライス盤が活躍する切削加工をメインに書かれている。
この本を読んで前提知識を蓄えて、なんとか設計者として加工業者さんと折衝ができたように思う。
この本は私が勉強を始めたときには無かった本だが、すばらしい。
このような本が、当時にあればどんなに心強かったか・・・
上で紹介した「設計者に必要な~」は切削中心だったが、量産品の設計時は板金や樹脂成型の知識が必要だ。
当時は本もあまりなく、企業に入らないとなかなか触れられないことだった。
「板金・樹脂・切削」の三本柱で量産コストも抑えながら、設計の勘所が解説されている。とても実践的で、勉強になる本。
この本も勉強当時に欲しかった本だ。
構造設計時、そこらじゅうのものを分解して半狂乱で参考にする機構を探し回った(笑)
機構設計の進め方や例が、易しく書かれている。
代表的な機構がまとめられているので、アイデア集として手元に置いておきたい。
機械設計の教科書として有名な本。最近改訂新版がでた。
教科書と言っても計算問題集というわけではなく、設計への取り組み方や概念が
書かれている本だ。
公差、加工、材料についてなど計算よりも実践的なノウハウも掲載されている。
旧版では後半はお説教が多くて読み飛ばすところもあった(笑)
CADの操作能力
会社によって違うけど、Autocadが多い。
これは慣れるしかない。体験版や一念発起してソフトを買って独習できる。私は独習した。
練習方法は、何か図面用意してひたすらトレース。
わからん操作方法がでたらネットやヘルプで調べて、メモっておく。そしてまたトレース。練習した時間に比例して早くなるから、頑張ってほしい。
ショートカットキーやコマンドを覚えると更に早くなる。
CADの練習してる時も、結構外野がうるさいが頑張って無視しよう。
「CADは単なる道具で~」とか言われてもひるんではいけない。
設計と言ってもいつも計算している訳では無く、CADでの修正など作業的な業務も多く発生する。
道具として使いこなせるとかなり残業時間も減る。
ショートカットを設定したり、マクロを組んだり、コマンドを覚えたり。CAD操作も立派なスキルだ。
体力
え?と思われるかもしれないが、結構本気でこの項目を入れた。
長時間残業が常態化していてかなり疲れてしまった。
私は体力がないのできつかった。
もちろんコミュ力だの国語能力だのと副次的に必要なスキルもあるが、まあ無くてもなんとかなるレベルの、どうでもよい事だ(笑)
取引先にでも怒鳴りながら話すような人、身だしなみが最悪の人なんかでも専門実務能力が高かったら大事にされていたから。
上流工程
仕事内容
メーカーへ就職するとたいていはこの工程のはず。
文字通り上流の工程なので、プロジェクトを企画し仕様を定義する側だ。
(会社によっては社内下請けみたいなポジションで企画段階には参加できない事もあるかも)
私はセットメーカーの開発部で構想設計をやっていた。
下流工程時代とは力の入れどころが違っていて、適応するのに疲れた。
下請時代と比べると資格や設計知識に関する向上心がある人が少ない印象だったけど、それよりも違うスキルが必要だから仕方がないのかもしれない。
必要なスキル
コミュニケーションスキル
コイツがほんとうに幅を利かせている。関連部門が多いからか意思決定にとにかく時間と労力がかかる。
会議、根回し、稟議、うまく立ち回らないと全く仕事が回らない。
寡黙な設計職人が大事にされていた詳細設計時代とは全く違っていた・・・
設計部は各部門の調整弁みたいな性格があるので、とにかく会議が多い。
私が嫌だったのは、同じこと言っても聞いてもらえる人とそうでない人がいること。
声のでかい体育会系のコミュ力には、正面からは勝てない。
そんな時にこの本を読んで、感動した。会議や打ち合わせは人柄や古参かどうかwではなく、技術でカバーできるんだと。
議事録はホワイトボードにみんなの前でどんどん書いていく。今はどこでもやってるかもしれないけど、私の環境では新鮮で驚いた。
他部門との調整などが多くなり、自分の取り込む情報が多くなる。
そんな中で上司などから進捗を聞かれたとき、余計な事をグダグダ言ってしまったりした。
この本は管理職でもない限り質問力より答え方のほうが大事と説いていて、当時は本当に膝を打った。
事例が沢山載ってあり、ダメな例もユーモアがあってクスっと笑えて面白い。
設計書を書く能力
ポジションによっては、そもそも設計書なぞかく機会が回ってこない事もある。
しかし私は個人的に書いて、頭を整理していた。
途中から入ったプロジェクトだと、何が課題でどんな仕様かがもうグチャグチャになっている事が多々ある。
そんな時、ゼロベースで考える事が出来るのだ。
ちょっとかっこよく言ってみたが、私が言いたいのは「古参に流されずに自分の頭で考えよう」ということだ。
「周りはこういってるけど、そもそもどうなんだ?」と考え直す心の余裕を持たないと主導権を握れない。
中途で入ると先人たちのやりかたがこりかたまってて、流されてしまうのだ。
外からの視点であれ?と思う事でも、聞けば否定されたと思うのか「古参の苦労知らんくせに!」とどやされたこともある。
この本は、自分で関わっている案件の設計仕様を整理して理解するのに大変役立った。
私がいた会社は設計仕様書がなかった。古参通しのあうんの呼吸で仕様ができあがり、最後に動く通りに仕様書もどきを書類として残しておくのが伝統だったのだ。
ゼロベース思考と何の関係が?と思われるかもしれないが、本書により設計書を簡単に作って各部門の要求を整理していくと、古参の矛盾をつつく機会を伺う事もできた。
「6W2Hシート」は簡単なのに便利なフレームワークで、これからもどんどん活用したい。
手加工スキル
ちょっと検証したいときとか、自分で手を動かしてものを作れると捗る。
簡単なものでもわざわざ図面書いて発注して届くのを待っていたりして、意外とやらない人が多かった。ボール盤すら嫌がる人もいた(笑)
会社では誰も工具の使い方を聞いても教えてくれないので、私はポリテクに行って自主練していた。
会社の偉そうな先輩よりも丁寧に教えてもらえるし、楽しいのでおすすめ。
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まとめ
私は周りの環境が悪く合わなさ過ぎて潰れそうだったので、貧乏でも独立したかった。
だから、下流工程で設計・製図力というポータブルなスキルを使う方がメリットを感じた。
しかし未経験から業界に入ってかかる負担から考えれば、上流の方が楽に感じるかもしれない。機械設計の技術的専門知識よりも、上で書いたようにコミュ力など一般的なビジネススキルがある人の方がうまく立ち回っていたから。
上流も下流もお互い必要だから優劣をつけるわけではないが、個人的にどうなりたいかで進む道を決めてほしい。
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姉妹記事としてこんなのも書きました。
『ついてきなあ』シリーズは、別記事でも紹介しています。