先日、お問合せで「バラシって何?」という内容を頂きました。
私も初心者の頃、会社でよく聞くものの意味がわかりませんでした。
そこで未経験者や初学者の方へ、記事にしてみました。
バラシって何?
一言で言うと「組立図から部品図を作る事」です。
業界用語っぽく聞こえますね。最初は「ばらしといて」って言われても意味が解りませんでした。
部品図とは?
更に「部品図」とは、「部品を製作するための図面」です。
そして、部品のビジュアルな仕様書です。
部品の実物が手元になくても、仕様が実物よりも明確にわかるもの、とでもいいましょうか。
- どんな材料をつかってる?
- 寸法は?
- どこまでの公差指定になってる?
- どんな形?
こういうことは、実物よりも図面見た方が正確に早く解りますよね。
バラシの実例
では、簡単に実例を紹介します。
例えば、これを見てください。
恥ずかしいですが拙作のユーフォーキャッチャーです。
(詳細記事もあるのでまたご覧ください)
3D CADで全体を設計しました。
3Dは完成したものの、実際に実物を作らないと絵に描いた餅です。
見ての通り、複数の部品から成り立っています。
ボディ部品は板金での製作を考えました。
業者さんに発注するなら部品図(部品を製作するための図面)を作らねばなりません。
この行為が「バラシ」ですね。
ネジとか市販品だったら、型番やメーカーを指定すれば図面は必要ありませんから。
例えば、下図図中のAの部品を発注するとして、右のような図面を描きました。
これが「部品図」です。
実務にどう役立つの?
下流工程なら毎日のように、だと思います。
私が初めに勤めたのは下請けの設計会社でした。
そこでは元請けが作った組立図が流れてきて、部品図をひたすら描く(バラシ)事をやっていました。
こう書くと「なんだ、下っ端の仕事か」と思われる方もいるかもしれません。
たしかに、先輩よりも後輩に回ってきがちです。
但し決して雑用だけの作業ではありません。
また上流工程に移ってからも、ちょっとした治具なら自分で図面を引く機会がありました。
そんな時にバラシの経験は役に立ちました。
私が大量のバラシ時代に身に付いたと思う事を、以下に書いてみます。
バラシで身に付くこと
製図スキル
組立図から引っ張り出してきた時点では、ただの線です。
そこに加工業者さんに設計者の意図が伝わるよう、寸法を入れ指示を加えてます。
簡潔に、正しく、きれいな図面を心掛けているうちにJISの製図ルールの運用が身に付きます。
読図力
上記で紹介した実例は組図が3Dだったので、バラシは比較的楽でした。
それに自分が書いた組立図なので、形状や意図は把握していますから。
しかし他人が描いた組図のバラシ、結構大変です。
しかも2Dで描かれた組立図では、三面図から形状を読み取り部品を取り出す必要があります。
複雑な装置だと線だらけで何がなんやら、混乱します。
レイヤーできちんとパーツごとに部品が描かれていれば、バラシ担当者も楽なんですが。
全部一緒のレイヤーで同色の図面は手ごわいです。
そういう難敵を片づけているうちに、形状を読み取る読図力が鍛えられていきます。
加工知識
バラす部品によって、製作方法はさまざまです。
- 切削なのか?
- 板金なのか?
- 成形するのか?
- 市販品の追加工なのか? ・・・など
組図から設計者の意図を読み取り、適切に図面にしていく必要があります。
そうしているうちに、加工の知識も蓄えられていきます。
設計知識
完璧に描かれた組立図ばかりではありません。
投影が省略されていたり、書き忘れていたり。
そんな場合は、部品図作成者が補完する必要があります。
例えば軸と穴が組図では中心線だけで描かれていたとしたら。
軸と穴がピン角同士では挿入しづらいですから、部品図作成の際は適宜面取りを加えたり適切な公差を入れます。
バラシているうちに、部品同士の干渉発見することもあります。
設計者と連携をとりながら組図の完成度をあげているうちに、設計知識やTIPSも蓄積されていきます。
CADの習熟
バラシは数をこなす必要があるので、必要に迫られてCAD操作に習熟していきます。
設計者にステップアップしたときも、CAD操作が速いと自分の考えをストレスなく表現できるので役に立ちます。
どうやって身に付けるのか?
入った先が設計会社なら、嫌でも初めはバラシ専属になると思います。
ただ実務だけでは目の前の作業こなすので一杯いっぱいなので、自分でも練習したくなりますよね?
CADの操作スキルなら、ひたすらトレースをすればいい。独習は容易です。
でもバラシとなると独学しづらいですが、試験を受ける事で訓練ができます。
私は技能検定をおすすめします。
理由は、試験の課題がバラシそのものだからです。
別途記事もあります。