材料力学のSFD/BMDの超初心者向け書き方マニュアルを書きていきます。
この記事ではとっかかりとして「試験問題を解くためだけの作業マニュアル」を目指しました。
今回は、BMD(曲げモーメント図)です。
この記事がおすすめな人
この記事は「勉強し始めの頃の自分に教えるつもりで」書きました。
こんなレベルでした。
機械設計技術者試験3級を受けるのに、はりのBMD/SFDが書けない
自分の場合、機械設計技術者試験3級を受検するために勉強を始めました。
でもいざ問題を見ても”何をしないといけないのか”すら、意味不明。眠くなるレベルでした。
そういう人が、なんとなくわかって参考書を読もうとする気が起きるところ、を目指します。
約束事さえ理解すれば、材料力学は比較的点が取りやすいボーナス科目になります。
この記事はあくまで補助なので、基礎から学ぶ際は後述のおすすめ参考書を読んでみて下さい。
ではさっそく。今回はBMDです。
BMD(曲げモーメント図)とは
おなじみの梁の図を見てください。
「はりに働く曲げモーメントの変化を図で表したもの」がBMD(曲げモーメント図)です。
「曲げモーメント」とはざっくりいうと「はりを曲げようとする一組の力」です。
図のように、必ずどちらかが+(プラス;反時計回り)、もう片方が-(マイナス;時計回り)方向に回転していて釣り合っています。
もう少し厳密にいうと、「曲げモーメント」は梁の内部に発生している力*1です。
外力が掛かっているのにつりあっている、ということは、つりあうために内部で踏ん張る力が発生している・・・という事です。
ただ、外力の数値で計算すれば曲げモーメント図は書けますから、あまり考えずに頭の片隅にでも置いておいてください。
この辺のちゃんとした定義は、後述の書籍で確認して下さい。
よく本には「図」と書かれてあり私には分かり辛かったのですが、
言い換えると「はりの位置ごとに曲げモーメントをプロットしたグラフ」です。
横軸ははりの長さ。
縦軸は曲げモーメント。
*1:日本機械学会, “JSMEテキストシリーズ 材料力学,” 日本機械学会, 2007, pp. 64.
例題 両端支持はり
では、例題でBMDを書いてみましょう。
シンプルな両端支持はりです。
図を書く手順 あらまし
図を書く手順のあらましです。
ざっくり3ステップです。
詳しくは、
例題を解きながらやっていきましょう
例題の解答
では、先程の例題でBMDを書いていきます。
STEP1. グラフを用意
グラフの用意をします。
横軸、x軸は梁の長さ、縦、y軸には曲げモーメントをとります。
ここに、曲げモーメント図を描いていきます。
STEP2.区間ごとに式を立てる
梁の区間ごとに、曲げモーメントを求めていきます。
もう少し具体的にいうと、区間ごとに式(曲げモーメントの合計を出すための)を立てていきます。
今回の例題だと、2区間に区切ります
STEP2.符号のお約束にご注意
ここで、お約束があります。
基本的に、この約束事に従って、曲げモーメントをもとめていきます。
約束事は、符号のきまりです。
約束1.力のモーメントは、反時計回りが+。
・・・反力を求める際は、このルールを使います。
約束2.曲げモーメントは、上向きに曲がろうとする方向が+。
・・・この約束は、曲げモーメント図をかくための式を立てる際に、使うルールです。
以前、まぎらわしい書き方(時計回り/反時計回り)をしていたので修正しました。申し訳ありません。
左端を原点に計算を進めている場合、上向きに曲がろうとしている力は、符号を+(プラス)に取ると考えた方がシンプルです。
さっき、「曲げモーメントは区間ごとに式をたてる」と説明しましたよね。
そのときに、こっちのルールを使ってください。
約束1と2は反対なので混乱するかもしれませんが、「工程によって使い分ける」とシンプルに考えて下さい。
STEP2. 式を立てる時の考え方
まず、左右の曲げモーメントはつりあっています。
ということは、区間ごとに区切ったら、片側のみを求めれば、それが曲げモーメントの値になるということです。
で、区切った部分に、仮想の支点があると考えて下さい。
仮想の支点は、やじろべえを指で支えているようにイメージしてもよいです。
STEP2. 第1区間の式を立てる
では、第1区間の曲げモーメントを求めます。
区間1の左側に注目して下さい。
区間1の左側に発生している力は、反力の+60Nだけですよね。
符号の約束は、さきほど説明したとおり、曲げモーメントは上向きに回転する方向がプラスです。
ちなみに、距離は左端を原点として、考えて下さい。
というわけで、区間1の曲げモーメントは、下記の式になります。
これが第1区間の式なので、すなわちこの区間は、60Xのグラフをかけばよい、ということになります。
STEP2. 第2区間の式を立てる
次に、第2区間の曲げモーメントを求めます。
第2区間の区切り線の、左側を見て下さい。
反力の+60Nと、荷重の-100Nが発生していますね。
式を整理しておきます。
STEP3. グラフを書く
はい、完成しました。
区間1は、+60xなので右上がりのグラフ、
区間2は、-40x+4000なので右下がりのグラフ、になっています。
梁の絵と並べると、力の移り変わりが一目でわかると思います。
100Nの集中荷重のポイントで、曲げモーメントが最大になります。
ここが梁のウィークポイントだということが、わかります。
まとめ
約束事は暗記です。始めは何も考えずに機械的に計算が出来るようになると楽です。
もう一回貼っておきます。
参考文献
- 中島正貴, 著: 材料力学, コロナ社, 2005, pp. 67-73.
- 日本機械学会, “JSMEテキストシリーズ 材料力学,” 日本機械学会, 2007, pp. 66-70.
この本は一見難しそうに見えますが、テキストを買いあさっては挫折を繰り返した私からすると、とても丁寧な方です。
導入向け書籍を卒業して、一歩上のレベルに進みたいときに手に取りたい。そんな本。
数学が苦手で初っ端に手に取ると、とっつきにくいかもしれません。
始めて学ぶ方へおすすめの書籍
初心者(初学者)にオススメなのは、この書籍です。
▲ 私は一冊目に買ったのがコロナ社でしたが、ついていけず。
この書籍で理解が追いつきました。
おすすめポイントは、微積分をなるべく使わずに解説されていること。
いきなり式の展開を見せられると、一気にやる気がなくなってしまうことがあるので。
この書籍で理解したあとは、上記のコロナ社の書籍にもすんなり入り込めました。
▲ 反力を始め、梁の問題をたっぷり練習できる問題集もあります。建築向けですが、わかりやすいです。
動画版もあります
この記事は、動画版もあります。※音声出ますので、ご注意ください。
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この記事とは別の例題で、手順を説明する動画もあります。
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