PR

商品画像風のCGを自力で作る方法【Inventor+Blender合わせ技】

3D CG

プレゼンや説明などの為、商品のCGが必要になる事があります。
この記事では、3D CAD「Inventor」と無償のCG制作ソフト「Blender」を使って、簡単に商品画像を作る方法を紹介します。

私は3D CADは使い慣れていてもCGとなると手探りで、最初は戸惑って投げ出しそうになりました。
しかし慣れてくると出来ることが広がり、俄然楽しくなりました。
初期の私と同じような状況の方に、「面白そうかも?」と思って頂くべく書きました。

スポンサーリンク

デモ画像

例として、スパナを描いてみました。

スパナCGデモ画像 1
スパナCGデモ画像 2

使用ソフト

  • 3Dデータ作成(モデリング):Inventor 2021
  • マテリアル設定~レンダリング:Blender 2.90

3D CADは私が使い慣れているInventorを使いましたが、objなどに変換できればソフトは問いません。
もちろん、Blenderだけでモデリングからレンダリングまで完結することも可能です。

Inventorについては、カテゴリーを作っていろいろ記事を書いています。

細かい作業手順はYoutubeにて

この記事では流れの紹介を念頭に書きました。

細かい作業の様子は、Youtubeにアップロードしました。
25分ほどの長めの動画です。スキップできるよう、Youtubeの説明欄に目次を設けています。

※注)音声入り、字幕付きです。

Youtubeへのリンク

CG作成に必要な工程

サンプル画像を作るには、大まかに下記の作業が必要です。3Dデータを作って、材質を設定して、光を当てて、画像を生成……という流れです。

  • モデリング(3Dデータ作成)
  • 出力のための設定(レンダー、カメラ設定など)
  • マテリアル(材質の見た目を設定)
  • ライティング(光の設定)
  • レンダリング(画像を生成)

どの工程も不慣れなCGソフトでこなすのは大変ですが、私が一番初めにつまづいたのは、CGソフト「Blender」でのモデリング(3Dデータ作成)でした。

CGソフトでのモデリングは大事ですが、完璧に習得するのを待っていると、なかなか次の工程に進めません。練習は別途行うとして、まずは自分が慣れたソフトでやってしまいましょう。

既に3D CADのユーザーなら、モデリングはそれに任せ、あとで変換してBlenderへ読み込むことができます。作るモノの種類にもよりますが、機械部品ならかなりの時間短縮になります。

但し、モノが衣服やキャラクターなど曲面が多かったり、彫刻的な造形が必要なものだとBlenderで直接モデリングしたほうが良いです。

例:翻るホットケーキやサンタの袋、プレゼントのリボンなんかは、Blenderのほうがモデリングが楽でした。

さて、次に各工程での作業を紹介します。

まずはモデリング。慣れた3D CADで

この記事では3DモデルはAutodesk Inventorで作ります。
(先述の通り、objなどに変換できればソフトは問いません。)

Inventorでスパナをモデリング中
Inventorでスパナをモデリング中

ここでコツとして……

3Dモデルが完成したら、材質(外観)が異なる部分は色分けしておいて下さい。
Blenderで面を選択する手間が省けるので、マテリアルの設定作業がかなり楽になります。

Inventorで、適当な色を塗っておく

あとは、*.objファイルとして変換します。

Inventorで、objへエクスポート

Blenderへインポート

ここからはBlenderでの作業に移ります。

objファイルを、Blenderへインポートします。

「背景シート」を作る

対象物をインポートしたら、とりあえずBlenderの作業空間にスタジオを作っておきます。
何もない部屋にとりあえずフロアシートを敷くような感じです。
具体的な作業内容としては、背景シートを作り、床や壁を作って商品を見せる環境を整えます。

出力のための設定

画像を生成し、最終的に出力するための設定です。
この記事では、以下の通り最低限の設定です。Blenderには様々は設定項目があるので、色々弄ってみて下さい。

レンダープロパティ

レンダープロパティタブを開くと、レンダリングに関する設定ができます。

  • レンダーエンジンはCycles、デバイスはGPU演算を使用しました。
  • サンプリングの値で、画質が決まります。上段のレンダーは最終用、下段のビューポートは作図中の確認用です。数値を大きくすると綺麗になりますが、時間がかかります。
レンダープロパティの設定

出力プロパティ

出力プロパティタブを開くと、画像出力に関する設定ができます。

  • 今回の画像サイズは1920×1080 pxなので、その旨を入力
  • 「レンダー領域」「レンダー領域をクロップ」にチェックを入れておく。(レンダリングがカメラ枠内のみになるので、PC負担が減ります)

カメラ設定

カメラは、追加→Cameraをクリックすると、カメラがオブジェクトとして追加されます。
その後選択して、プロパティタブを開くと、カメラに関する設定ができます。

カメラはその名の通り仮想の写真機なので、焦点距離や絞り(今回は未設定)などを入力していきます。

  • 焦点距離は85mmにしました
  • 範囲の終了の値は、ビューを見ながら調整していきます。値が小さいとビューポートでズームした際に画像が見えなくなる現象が起きます。

現在の視点をカメラ枠にする

ビューで現在表示している風景を、カメラ枠として設定できます。
オブジェクトモードで、ビュー視点を揃えるAlign Active Camera to Viewをクリックすると、カメラ枠が生成されます。

現在のビューをカメラに設定

マテリアル(材質)設定

読み込んだ3Dモデルについて「どう見せるか」を設定していきます。
金属やプラスチックなど、表現したい材質によって細かく設定を進めます。

Inventorの色分けが役立つ

先のInventorの項目にて「材質(外観)が異なる部分は色分けしておいて下さい」と書きました。
それは、ここで役立ってきます。

インポートすると、色分け部分が既にプリンシプルBSDFとしてそれぞれ設定されており、選択する手間が省けます。

色分けされている部分を、順次選択している様子

スパナの光沢

この記事のデモ画像は、スパナ。光沢のある鏡面に近い金属感を出すべく設定しました。
プリンシプルBSDFというシェーダーを使っています。

プリンシプルBSDFには沢山のパラメーターがありますが、金属の光沢だとメタリック粗さが一番重要です。

一方、梨地っぽい箇所はこんな感じです。

ノイズテクスチャバンプで凹凸させてザラッと感を出しています。
あとで考えると、もっと粒々感を出せばよかったです。

梨地風のノード

ライティング

次は、照明です。
現実での写真撮影のように、光を当てて対象物を美しく演出します。この工程、なかなか思う絵にならず、苦戦しました。

最終的にはこんな感じに落ち着きました。HDRIでの照明と、オブジェクトの照明(放射を設定)を使いました。

HDRIはHigh Dynamic Range Imageの略で、CG作成時に使うと全周の背景写真としてだけではなく、照明としても活用できます。

▼ こちらの有名サイトを利用しています。高品質のHDRIを無料かつ、ライセンスはCC0という有難いサイトです。

Poly Haven • Poly Haven
The Public 3D Asset Library

天面の照明は、グラデーションに

▼ 天面のライトは、右側面のように白一色ではなく、グラデーションにしました。

▼ 左は照明色が白一色、右はグラデーションを適用した場合です。ほんのりですが、右にはスパナの天面に濃淡ができました。

BLENDER、オブジェクト照明による見え方の比較
見え方の比較。左は照明白一色、右はグラデーションを適用。

▼ ノードはこんな感じです。テクスチャの一般的なノードとカラーランプを放射に繋いでいます。

照明の有無で激変

照明の位置や組み合わせで見た目は激変します。特に今回の画像ではオブジェクトからの放射光が重要でした。

▼ 参考に、2つの状態の画像を貼ります。

  1. 照明が全く無い
  2. オブジェクトからの放射光が無い(HDRIは有)

レンダリング

レンダリングとは、3Dモデルから画像を生成する工程です。
これまでに設定したマテリアル、光などの情報を基に計算されます。

レンダリングは最終完成時だけではなく、各工程で見た目が気になったら、随時実行して仕上がりを確認していきます。最終の完成画像は高い画質で出力しますが、途中経過では低い画質で実行すると処理が速く済みます。

最終レンダリング

全部調整が終わって最後に出力する際は、トップメニューのレンダー→Render Imageで実行できます。(もしくはF12キー)

そしてレンダリングが完了したら、画像Save As で任意の形式(.pngや.jpg)での保存が可能です。

Blenderでレンダリング画像を保存

操作動画

▼ 冒頭でもご紹介しましたが、細かい手順はYouTubeにアップしました。
25分ほどの長い動画です。Youtubeの説明欄には目次を設けています。

※注)音声入り、字幕付きです。

Youtubeへのリンク

画像も貼り込めます

今回ご紹介した例は、金属の質感のみを適用したものでした。
しかし商品画像だったら、パッケージなどのデザイン画像も物体の表面に表示したい場合がありますよね。
もちろんそれもBlenderで可能です。UVマッピングという作業を行うと、任意の画像を物体に貼り込めます。

▼例えば、こんな感じです。サンプルとして歯磨き粉のチューブを描いてみました。

Blenderで描いた、歯磨き粉のチューブ画像
Blenderで描いた、歯磨き粉のチューブ

おすすめ資料

私がBlenderをゼロから始めるにあたり、役立った本や動画を紹介します。

書籍

▲ この本はゼロから課題を作っていくチュートリアル型ではなく、理想の表現を実現する技をまとめたテクニック本です。Blenderの知識が皆無の状態で見ると難しく感じましたが、少し操作に慣れてから読むと手放せない本になりました。

私にとって特に役立ったのは、ポリゴンモデリングの章です。普段使っている3D CADとはモデリングの勝手が全然違うので、わかりやすく概念が解説されており助かりました。
ほか、仕上げに重要なマテリアルや、UVマッピングについての説明もわかりやすいです。

なお、この本での操作画面はBlender 2.77a時点のものです。私が始めたのはUI(ソフトの見た目)が変わった2.8からなので、慣れないうちは少し戸惑いました。しかし実行する機能はほとんど同じです。メニューの場所が分からなければ、ネットで都度調べながら進めればOKでした。

▲ この本はCGの解説書ではありません。家具、飲み物や服など商品別にお手本写真とライティングのテクニックが解説された、写真撮影の本です。
私は写真の嗜みがないので「そもそもどんな絵だと美しく見えるのか」から自信が無いんですよね。
この本があると眺めるだけでも興味深くて、「こんな風に表現すると商品が綺麗にみえるだな~」という指針が得られます。

YouTUBE ― Blender Guru

Blenderならこちらのチャンネルは外せませんね……。私も何も知らない状態で初めてみたチャンネルでした。Blenderの凄さ楽しさに感動して、夢中でドーナッツを作るところから始めました。

Blender Guru
Andrew Price creates tutorials for the free open source 3D software "Blender". Born in Australia in 1988, Andrew has cre...

さいごに

3D CADにもレンダリング機能がある事が多いですが、CGソフトを使うと更に表現の幅が広がり、楽しくなります。もしCGが必要な機会があれば、ぜひ挑戦してみて下さい。

関連記事

▼ Adobe Dimensionというソフトの紹介です。機能は限定されていますが、Blenderよりも手軽に商品CGを作れます。

タイトルとURLをコピーしました