長らく使っていたAutoCADから「BricsCAD」に乗り換えました。
特に問題もなく、大幅に維持費を抑えられてうれしく思っています。
検討過程や使用感を、まとめました。
BricsCADとは?
「BricsCAD」はAutoCADの互換CADです。
ファイルフォーマットはdwg、dxf。
基本的には、AutoCADが操作できれば「BricsCAD」をシームレスに使えます。
ゼロから操作を習得する必要はありません。
作図概念、コマンドエイリアスはAutoCADとほぼ同じだからです。
機能はもちろんのこと、大きいのは永年ライセンスである、ということ。
2Dのみ+LISPが使えるClassicだと、税込みで66,960円(V17購入時)。
純正AutoCADで考えると、サブスクリプションで約4か月分の価格ですからね。
CADの維持費が大幅に節約できる!という訳です。
実はつい最近まで別の互換CADの導入を考えていましたが、ツイッターでフォロワーの方に教えて頂き気が変わりました。
結果。問題なし
購入したのは最近ですが、体験版を含めると既に1ヶ月は業務で使用しています。
特に不具合はなく問題はありません。
当初はソフトの外観の違いに戸惑いましたが、すぐに慣れました。
AutoCADでの2D製図でできる基本作業はほぼ再現できるので、大がかりな移行のストレスもありませんでした。
印象をざっくりいうと、こんな感じ。
- 純正AutocadやLTより軽い
起動のスプラッシュ画面で長々待たされるようなことはありません(@classic)。 - ソフトの外観がちょっと独特
慣れますし、AutoCADと同じコマンドが使えるので気になりません。
各人CADに求める用途が違うと思うので、注意して下さい。
純正AutoCADで3D機能を使ったり、常に最新版にアップグレードして新機能を使い倒している人にとっては不都合がでる可能性もあります。
なお、私のチェック項目を以下に書いておきます。
私のチェック項目
3Dは別CADを使っているので、基本的な2D製図がメインです。
このCADに求める機能をざっと挙げてみました。
基本機能しか使ってませんね。
- 外観や、互換性
- 外観はクラシックスタイルにできる?
- 読み込めるバージョンは?
- 作図機能
- 直線
- 四角形
- 円
- 曲線
- 寸法
- 編集機能
- オフセット
- ストレッチ
- スケール(拡縮)
- 移動/複写
- 長さ変更
- 大量の図面処理
- バッチ印刷
- DXFとDWGの双方向一括変換
- スクリプトファイルの一括適用
上記チェック項目は、ほぼ問題なく満足しています。
以下に、補足しておきます。
1~3. 外観と操作性 について
純正AutoCADとは見た目が違います。
しかし嫌いなリボンもないし、シンプル。ちなみにリボンは出すこともできます。

コマンドエイリアスはほぼ同じです。
普段からコマンドを打ち込んで作業している人なら、違和感は感じずすぐ作業できます。
アイコン派の人でも、アイコンの配置換えができるので、ほどなく慣れるでしょう。
4. 大量の図面処理 について
これ私が個人的にこだわっているポイント。
これができるか否かで、沢山の図面をさばく効率が段違いになります。
- AutoCADでいうバッチ印刷は標準機能として搭載されてます。
こちらは「パブリッシュ」という機能です。 - DXFとDWGの一括変換は、未搭載。但し、外部LISPツールを使えば簡単です。
https://www.noboyu.com/script-writer-autocad/ - 上記ツールを使えば、DXF変換以外にも簡易自動化ができるので便利です。
長文のスクリプトの場合は、AutoCAD LTと同じ方法(下記記事)で実現できます。
選んだグレード
BricsCADにはグレードが3種類あり、機能と価格が違います。
詳細は、下記のBRICSYS JAPANサイトでご確認ください。
私はBricsCADには2D機能しか求めませんので、一番安い「BricsCAD Classic」を選びました。
一番安いグレードとはいえ、LISPなどプログラミング言語がサポートされています。
これはうれしいポイント。
私のようにAutoCAD(LTふくむ)で2Dしか使っていない人へ、ぜひおすすめしたいグレードです。
特にLTは純正ではLISPがサポートされていないので、業務効率上の恩恵がありますよ。
自分で組まなくても、Autocad用のlispツールがネットで沢山公開されていますから。
「2D作図+LISP」は過不足なく業務効率がアップするベストな機能構成だと考えています。
過去記事でも熱く語っていますので、ご覧ください。
▼過去記事
代理店か、公式サイトのいずれかから購入
私は日本の代理店サイトから購入しました。
クレジットカードで決済すると、数日後にライセンスキーが送付されてきます。
それを、体験版として使っているBricsCADに入力してアクティベートを解除するという流れです。
BricsCADの本社サイトでもクレカ決済ができるようですが、英語と日本語ページが混ざっていてなんか使いづらいので止めておきました。
他社互換CADとの検討結果
導入にあたって比較検討したCADは、BricsCADを入れて2つ。
他にも色々あるのかもしれませんが、キリがないので見ていません。
- IJCAD
- BricsCAD
私がBricsCADを導入した決め手は、
- まずは価格
- ついでに、手持ちのLISPツールが正常に動いたこと
でした。
ソフトの外観は、IJCADのほうがきれい
IJCADは外観や操作性がAutoCADに限りなく近いし、戸惑いがありません。
かたや、BricsCADは癖があると感じました。
純正ならLT95からのユーザーの私ですが、結構戸惑ってヘルプを何回か見に行きましたからね・・・。
コスパはBricsCADに軍配
- BricsCADの最安グレード(Classic)、LISPのファイルロードが出来て、75,900円(税込・2019/12/11時点)。
- IJCADでLISPファイルロード対応のグレード(STD)だと、82,500円(税込・2019/12/11時点)。
- IJCAD最安グレード(LT)は、60,500円(税込・2019/12/11時点)です。
永年ライセンスなのでせっかく買うなら少しは拡張性も欲しいし、かといって欲張りすぎると費用負担がきつい。かなり悩みました。
私はLispのファイルロードができる割に安い、というところに価値を見出しました。
手持ちのLispツールが動いた
私が良く使うlispツールが、BRICSで動きました。IJCADでは残念ながら動かなかった。
物凄く個人的な理由ですが、原因みつけて対策するのもめんどくさいなーと思っていたので、これでかなり揺らいでしまいました。
▼そのツールの記事はこちら
CADを乗り換える際は、体験版で実際の業務を一定期間行ったほうがいい
私は最終的にBricsCADを選びました。
これはあくまでもたまたま私に都合が良かったからです。
自分がCADに求めてることって、長く使っているほど無自覚になりがちです。
馴染みすぎて体の一部のような感覚で。
ですから、小さな不満点を含めて評価するには体験版で一定期間業務を行うのがベストです。
最低でも一週間ほど普段のCADは一切使わずに置き換えてみると、いろいろ見えてきます。
安さや操作性だけでなく、
- 今まで書いた図面を開いたときに変なエラー吐く
- ブロックの基準が狂って飛んでいく
・・・などという事がおきるかもしれません。
私には当てはまりませんが、特殊にカスタムした図面でどうしてもエラーが回避できない・・なんて事が事前に分かれば、AutoCADを使い続ける判断材料になります。
導入後の環境設定、気づいたこと
AutoCADと互換性があるとはいえ、完全に同一ではありません。
少し工夫、調整が必要です。
AutoCADに近づけるために私がやった設定を、書きだしました。
まだ自分自身気づいていないだけで、ほかにも「AutoCADならできるのに~」みたいな事が出てくるかもしれません。随時、追記していきます。
SHXフォントを調達しておく。japanese.shxは回避したい
下記のAUGIjpサイトで、日本語フォントが無償配布されています。
いくつかfontが収録されています。
「extfont2.shx」などとりあえず全部をBricsCADのfontフォルダーに入れておきました。
fontフォルダは、BricsCADのインストールフォルダをたどると、すぐに見つかるハズです。
このフォントは2005以降の純正品に採用されているので、相手先AutoCADで見つからないことはまずないと思います。
どうして?
AutoCADで使われている日本語用shxフォント(bigfont)は、BricsCADには同梱されていません。
代わりにjapanese.shxという日本語フォントが入っています。
しかし、このフォントを使うのは気が進みません。
なぜなら、AutoCADの標準フォントではないからです。
BricsCAD上ではきれいに見えますが、AutoCADやAutodeskのビューワー(ビューワー詳細は次項目)で開くとフォントが見つからず「???」と表示されてしまいます。
※「fontが見つからないので置き換えますか?」とAutoCAD上でメッセージが出るので、表示は可能です。
ただ相手側に余計な手間が発生することになるので、私は気が進みません。
BricsCADデータをAutoCADで開くと、どうなる?
BricsCAD標準の「japanese.SHX」を使った図面をAutoCADに渡すとどうなるか?
ちょっと試してみます。
BricsCADでこんなファイルを作りました。
- 1行目は、純正AutoCADにも収録されている「ExtFont2.shx」を使って書きました。
- 2行目は、BricsCAD標準の「japanese.shx」を使いました。
- 3行目は、TrueTypeフォントのゴシック体で書きました。

Autodeskのビューワーで開いてみます。
早速、こんなメッセージが出てきました。

今回は、下の「無視する」を選択します。
(ちなみに上の「指定しなおす」を選択すると、AutoCAD上のフォントで置換できます)
すると、ビューワー上はこんな風になりました。

2行目が、空っぽです。フォントがないため、表示ができないという事です。
ビューワーではなくAutoCADで開くと、?ハテナマークが表示される場合もあります。
共通フォントさえいれておけば、これを回避できます。
確認用に、DWG TrueViewを入れておく
BricsCADで描いた図面の表示確認用に、Autodeskの「DWG TrueView」をインストールしました。
- 自分の図面が純正CADでとんでもないことになっていないか?
- もしくは逆にBricsで開いたらメチャクチャだけど、本来はどうなってるの?
みたいな際に、力を発揮します。
また、AutoCAD図面のバージョン変換もできるのでおすすめツールです。
例えば、AutoCAD2013より新しいバージョンの図面はBricsCADでは開けません。
しかし、このビューワーがあると下位バージョンへの変換ができます。
参照回転は別コマンド
参照回転は、純正のAutoCADで個人的によく使うコマンドでした。
純正AutoCADでは、rotateコマンドからオプションを指定して行っていました。
BricsCADでは、それとは違い専用のコマンドが用意されています。
「ALIGN」というコマンドです。なんか心なしかrotateより使いやすく感じます。
(先ほど気づきましたが、AutoCADにもALIGNあったのに、使っていませんでした・・・)
操作動画、貼っておきます。(ループします)

もちろん、コマンドマクロも定義できる
ツール→カスタマイズから、ショートカットキーの割り当てやクリックの挙動、コマンドマクロの定義などが行えます。

私は早速、よく使うコマンドを登録しました。
上図の例では、ショートカットではなくアイコンにコマンドを割り当てています。
アイコンも、頭文字で自動的に生成してくれるので楽ちんです。
マイナーアップグレードなら、無償で可能です
メジャーバージョンアップの権利を含んだライセンスは高いので、自分は見送りました。
そんな場合でも、マイナーアップグレードなら無償でできます。
(例えば、V17.1 から V17.2へ)
実際、私もアクティベートしてからアップデートの存在に気付きましたが、無事反映できました。
やり方を簡単に書いておきます。
▼本社ブログにも詳しく書かれています。
blog.bricsys.com
情報リンク
BRICSYS JAPAN
私は購入はこのサイトから行いました。
メールでなら、無償で質問を受け付けてもらえます。
また、FAQも掲載されており、コンパクトに情報がまとまっていて見やすいです。
もちろん、日本語でOKです。
本社サイト

体験版、最新バージョンのダウンロードはこのサイトから行います。
日本語は機械翻訳のようで読みづらいので、英語での表示をおすすめします。
本社オンラインヘルプ、FAQデータベース
ヘルプの検索は、英語でキーワードを入れないとヒットしません。
ヒットさせてから翻訳にかければ、効率が良いです。
本社ブログ

最新情報やTipsが掲載されています。
情報収集におすすめ。
フォーラム
ユーザー同士の情報交換ができます(英語)。
過去記事を検索すると、とても有意義な情報が得られました。
さいごに
BricsCADは買い切りなので、デメリットとしては、年々古くなることです。
ただ私の場合は2D CADは基本機能しか使わないので、古くとも「とりあえずCADを確保できている」のは経済的に安心感があります。
一方、AutoCADはサブスクリプション方式(利用期間分だけ支払い)なので、最新機能に興味が出たり、使う必要があればたまにAutoCADに戻ることもあります。
柔軟に良いとこどりをしています。
関連記事
最後まで迷っていたもう一つの互換CADです。