機械設計ですぐに機構が思い浮かばなかったら。
機械設計のスキルって、長い間会社で経験出来た人だけの「特権」ではない。
身の回りに教材が転がっている。
行き詰ったらどうする?
前例のない新規設計を振られて、すぐに思い浮かばない時。すごく困ると思う。
「先輩に聞けば?」って思う人もいるだろう。
残念ながら彼らもアテにはできない。
多忙で余裕がない事もあるし、そもそもわからない事もある。
私の手近な例になってしまうが、前いた会社ですぐに機構を考え出す様な設計職人が定年や退職でいなくなってしまった。
属人的で門外不出だったので特に後継者教育なんかもない。
メーカだから上流工程だったし、優秀な頼れる協力会社がいるから仕様の丸投げでも仕事は回る。しかし詳細設計まで自分一人でこなすスキルは…ない。
だから後輩に突っ込んだことを聞かれないか、みんな内心ビクビクしていた(笑)
そして先輩方だって新規設計に取り組む場合は、誰にも頼れない。
孤立無援だ。どうしようか。
1人でもリバースエンジニアリング
私はどうしたかというと、手当たり次第に実物を見て回った。
実現させたい機構や構造を採用した市販品を入手し、構造を理解する。
実例を探しに、家電売り場を長い時間ウロウロしたこともある(笑)
かっこよく言うと、リバースエンジニアリング。
「リバースエンジニアリング」聞くと、開発手法として採用した会社の指示でやるものって当初思っていた。
そんなことはない。設計者として個人的にどんどんやればいい。
(高価な装置など個人では入手困難な場合もあるけど)
新規設計と言っても、自分にノウハウがないだけで世の中には似たような製品が既にあるはずだ。
机上でいくら考えても仕方がない。
他社製品だけじゃなく、社歴が短いなら自社の過去の製品も参考になるかもしれない。
私は所属していた会社の過去の製品を、勝手にバラして研究していた。
ベテランにとっては過去=当たり前の知識でも、新人や若者にとれば学ぶところが多かった。
もちろん、丸パクリは問題でモノによっては特許侵害など注意すべきこともある。
しかしすべての製品がオリジナリティーの塊というわけではない。
数社のものを見ていて共通点が発見できると、設計上の定石を学ぶこともできる。
せっぱつまった課題がないときでも、勉強ができる。
身の回りは教材だらけ
何が参考になるかは人それぞれだけど、小物で例を挙げてみる。
ホッチキス
小さいけどノウハウの塊だ。とても勉強になる。
- 持ち手(たいていプラスチック)と板金部分の接合方法
- マガジンの板金構造
板厚は?折り方はどうなってる?溶接個所は?
など。
おもちゃ
子供が使うものなので、高度な安全性を兼ね備えている。
さらにデザイン性、プラスチックの成型技術や構造など、見どころがいっぱい。
電動オモチャなら、ギミックも大いに参考になるだろう。
100均の商品
100円で様々な製品の実例を入手できる宝庫だ。
プラスチック製品なら、厚みや強度のぐあい。ピンの位置。
おしゃれな缶なら板金技術を学ぶことが出来る。
パーツのカシメ方、溶接個所など。
曲げ部にシワや膨らみが出ているなら、不良品どころか儲けもの。
加工上の弱点の資料になる。