3D CADのInventorで、構想から詳細設計まで進める方法を紹介します。
この記事では、普段の業務で私が踏んでいる手順、機能を書きました。
Inventorが初めての方のご参考になれば幸いです。
動作環境
この記事の環境は、下記の通りです。
- Inventor Professional 2021/Windows 10
サンプル課題


先日、趣味の工作で自動販売機風のおもちゃを作りました。
その際の設計検討は全てInventorで行いました。
これを題材に、Inventorで構想から詳細設計まで進める方法の一例を紹介します。
構想開始。まずは仕様を整理、仮定
まずは、作るモノの仕様を決めます。
デザイン・大きさ・重量など、仕様として決まっている事があるはずです。
小規模な件なら、明確な仕様書がないかもしれません。その場合は簡易的にでも仕様書を作り、整理していきます。現時点では決まっていない事は、仮定でOKです。
この段階では、まだCADに触れません。例えば紙にラフに絵や数字をかいて、検討を進めます。

Inventorで思考のたたき台を作る
ここからは、Inventorでの作業に移ります。構想を3D化し、思考のたたき台を作っていきます。
目的は、必要な部品やレイアウトの把握です。
この工程ではスピード優先で、粗くモデリングします。
パーツ環境を開く
パーツ環境で作業します。今からユニット全体の絵をここに描いて検討していきます。
ファイル→新規をクリックすると、下図の画面が出てきます。

パラメーターに諸元の項目をつくる
すぐに絵を描きたくなりますが、モデリングの前にパラメーターに項目を作ります。
今回の例だと、ざっと以下のような数値をパラメーターに登録しました。
- 外形幅
- 外形奥行
- 外形高さ
- 機構部高さ
▼ 管理タブ→パラメーターをクリック。出てきた画面の数値を追加で項目を追加できます。

主要寸法をパラメータに登録しておけば、後から仕様が変わってもこの表の数値を変更するだけで3Dデータを変更できます。
※ パラメーターに未登録だと該当するスケッチを辿る必要があります。

モデリングはざっくりと!
あとはモデリングを進めていくだけです。前述の通り、ここではモデリングはラフに進めます。一つの部品に凝ってしまうと、装置としての全体への注意が反れてしまうからです。
▼ 主要寸法は手入力せず、先ほど作ったパラメータを選択します。

▼ 独立した部品は、モデリング時に新規部品として作って下さい。
新規ソリッドを選択すれば可能です。
※ 後からアセンブリファイルに変換する場合、部品として認識させるためです。

一旦完成。一人レビューの時間
現状の仕様を反映し、必要な部材の絵を描いて、ある程度見た目が整ったらいったん完成です。

ここで、一息ついてレビューの時間です。
例えば
- 思ったより使える空間が無い……
- 配線はどうしよう?
- 保守用のパネルはどこに設けよう?
- 作業時に手は入るのか?
- 組立の順番は?
……などなど、組立、保守を含めた俯瞰的な視点で絵を眺めます。
想像できる課題を書き出し、検討を進めます。レビューの結果は、さっとスケッチして3Dデータに追記し、きちんと残しておいて下さい。
画面をそのまま印刷して手描きメモを入れてもOKです。特に配線の絵は初期段階でモデリングするのは面倒なので、手描きで済ますこともあります。
(任意)アセンブリに変換可能
パーツファイル(.ipt)をアセンブリ(.iam)に変換することが可能です。
「環境タブ」→ コンポーネントを作成をクリックし、実行します。保存先はわかりやすい場所を各自指定して下さい。
画面上で部品を囲むなどして選択すると、対象となる部品を指示できます。


layout-design.iamというトップアセンブリファイルと、それに属するパーツファイル(.ipt)が生成されます。
現状では全部品を一つのパーツ環境で編集していましたが、これで個々の部品を1ファイルとして扱えるようになります。
なお、生成後は.iamファイルが自動的に開かれます。ファイルを保存する操作が必要です。

詳細検討に進む
構想検討が済んだら、次は個々の部品の形状や詳細な機構などを詰めていきます。
その際によく使う機能を紹介します。
構想検討時のファイルは、詳細設計時に使わなくても構いません(個人の好みですが)。
あくまで初期段階の「下書き」として割り切り、全ての部品を後から編集しやすい様に「清書」し、新たにアッセンブリを組む方が後々扱いやすいと思います。
機構検討は2Dブロックで
機構の検討は、Inventorのブロック機能を使えば、快適に少ない操作で検討を進められます。
ブロックとは、任意のスケッチを一塊の素材として、扱える機能です。
簡単に今回の課題で検討過程を説明します。
1.使う部材を一つのスケッチに描く
お菓子を押し出す機構に、スライダークランク機構を採用しました。
動力やスライダーなどの機構部品は、市販品のタミヤのギヤボックス、シャフトを使います。


機構検討用に新規のパーツ環境(.ipn)で、作業します。
市販品の寸法を簡単に採寸して、スケッチしていきます。
下記の部品の絵を、一面だけ描きました。
- ギアボックス
- シャフト
- クランクアーム
- 連節板

2.ブロックに変換する
先ほどのスケッチを開いた状態で、作業します。
「スケッチタブ」→作成→ブロックを作成をクリック。
まずは、部材の絵を選択し、名前や説明など入力します。
OKをおすと、ブロックが作成されます。

これを繰り返して、他のブロック(シャフトなど)を作ります。
3.配置して、拘束する
ブロック化したので、自由にドラッグできるようになりました。
そのままラフにブロックを配置し、寸法を入れたり拘束をかけたりして、動きを規定していきます。
▼完成したらこんな感じ。動きの様子が簡単に確認できるようになります。

4.ブロック寸法は、その場で編集できます
各ブロックの寸法値は編集し可変できるので、レイアウトの検討に役立ちます。
左のモデルブラウザのブロック一覧の該当ブロックを右クリック→寸法表示設定を選択すると、ブロック作成時に入れた寸法が表示されます。
▼ 操作の様子です。寸法をダブルクリックすると、元のブロックを逐一開かなくても、形状を変えられます。


展開図機能(シートメタル)が重宝
試作やちょっとした実験だと、簡単な部品は手加工することがあります。
形状の自由度が高く便利なので板金部品(薄いアルミやPET、何なら段ボール)をよく使いますが、そんな折に役立つのがシートメタル機能です。
▼ このコンテナ(商品用のマガジン)も、さっとシートメタル機能で書きました。厚みを入れておけば展開図も生成してくれるので、工作時にはよくお世話になっている機能です。


▼ 別記事に、シートメタル機能を使う様子をまとめています
さいごに
構想を固めていく初期の段階では、パーツ環境で手早く思考内容を立体にすると、検討が捗ります。
Inventorは多機能なので全ての機能を使おうと思うと圧倒されますが、限られた機能だけでも検討を進められます。