機械設計者は「ゼロから物を産み出す人」と始めは思っていました。
しかし仕事をして感じたのは、「なるべく新規設計はしたくない」です。
「新規設計をしたくない」というとただのサボりみたいですが、その方が結局は良いモノが出来ることが多いからです。
特に初心者の時こそ、この考えを持っていたらなあと思います。
何でも自分で作ろうとした
失敗談を書きます。
仕事に就き始めて間もないころ、会社でケースを作るように言われました。
とある加工機の基礎実験をしていて、ワーク周辺を覆うのが目的です。
「しっかりしたものを作れ」とか外形サイズ程度の仕様しか言われず、私はそれ以上確認せずに設計を始めました。
そして作ったのが、板を6枚組み合わせた箱です。箱の1面につき、板1枚です。
5mm厚のアルミにアルマイト処理までかけて、ボルトで止めるというものです。
無駄な加工や不必要な公差もモリモリ入れていて超贅沢仕様です。
普通は誰かが止めてくれると思いますが、みんな忙しいのでスルーで現物ができあがっちゃいました。
加工費も滅茶苦茶高いし、ワークを取り出すたびにボルト外さないといけないし、アルミとはいえ無駄に分厚いから重いし、最悪です(笑)
市販品を制する
今だったらどうするかというと、市販品を買います。
よほど特殊なサイズなら、板金で作りますかね…
ミスミあたりで普通に買えますし、他でも探せばケースくらい沢山市販されています。
そのまま使えなくても、市販品を追加工したほうがよほど早いし安い。
機械設計者は、何でも図面引いて設計して作らねばならないと思っていたんですね。
量産品などの製品設計では市販品で済まされないでしょうけど、お買いもので済む場面は結構あります。
実験機やジグや少量のものなど、「無理に作らなくても市販品の方が品質いいのに」と思う事が今まで多々ありました。市販品はズルだと言われてしまう風潮だったので仕方なかったですが・・・。
人件費かけて設計して加工・材料費かけて、出来上がるのが中途半端なものってもったいないですよね。
最後にやっと新規設計を検討
ノウハウもないのにむやみに設計するくらいなら、その時間をカタログ眺めているほうがよほど有意義です。
カタログを眺めた上で、用途に合わないものがない。
もしくはオーバースペックでもったいないなど、どうしても市販品で賄えない時になって初めて、新規設計を検討すべきだと思います。
自分を指揮者だと思うようにする
「何でもゼロから自分でつくる人」ではなくて、「仕様を満たすものを用意できる人」を目指すようにしました。
QCDが満たせれば、別に自分が図面引かなくてもいいわけです。
適切な市販品を集めて組み合わせて、一つのモノをつくる。
市販品メーカーや加工業者さんなど、設計者は仕様を把握して「モチ屋」に適切に依頼し指示するのが仕事だと思います。
そう思うとちょっと楽になりませんか?
市販の箱一つとってもノウハウの塊です。
人一人が蓄積できるノウハウには限りがあります。
何でもゼロから作るのは、果てしない雲をつかむような徒労感がありますからね。