「実際の業務で資格が役に立った事、関連があった事を教えて下さい」
という内容のメールを読者の方から頂きました。
というわけで、資格が実務の何にどう役立ったか?を実際の個人的な経験から書いてみました。
機械系の資格はいくつかありますが、ここでは「機械設計技術者試験3級」を例にします。
具体的に資格が役立った場面は?
さて「機械設計技術者試験3級」の出題科目は下記の通りです。
- 機構学・要素設計
- 機械力学
- 制御工学
- 工業材料
- 材料力学
- 流体工学
- 熱工学
- 工作法
- 機械製図
この中で、役立った事は何か?
思い返すと、色々な場面で全ての出題科目が役立っています。
特に私は理工大卒ではありませんので、資格で勉強できる有難味がとても身に染みています。
「最低限これを勉強しよう」というペースメーカーになってくれるので、効率的に勉強が進みました。
いくつかエピソードを挙げてみます。
市販品を使うとき
実務では何もかも0から作るわけではありません。
ネジ、軸受、その他ユニットの市販品を採用し使う訳ですが、そんな時勉強した事が役立ちます。
科目としては、「機構学・要素設計」ですね。
一般的にどういう種類があって、基本的にどう計算して使うのか?
そういった実務の訓練が試験で出来るのが嬉しいです。
ねじ、軸受、歯車、ベルト……etc。
設計分野によっては全部使わないけど、いざ必要になっても焦らなくなります。
後は、市販ユニットだとカタログを見ながら負荷を計算しますが、それにも抵抗が無くなります。
「機械力学」で勉強したことが利いてきます。
試験の範囲だけではなく、勉強時に買った本も有用です。
勉強したことで暗記していなくても「あの本のあそこに載ってたっけ?」とすぐに参照することができます。
加工工程とやりとりするとき
科目「工作法」がダイレクトに役に立ちます。
自分が図面を引いたものの加工法に何を選ぶのか?
一通りの現実的な加工方法が頭に入ってるのとそうでないのとでは、確実に違います。
加工工程の方との話するときも、ある程度の知識があると話がスムーズです。
新規設計するとき
例えば0からの設計時。
試験でしっかり勉強していれば、材料の選定や、考えた機構の強度を当たりをつけるレベルでさっと計算できるようになります。
科目としては「工業材料」「材料力学」「機械力学」が助けてくれます。
但し具体的な機械のギミックは3級の勉強では得られませんが、それは都度ほかの書籍で勉強したり情報を取りに行けば良いわけです。
概念がわかるだけでも助かることも
自分の専門分野でなくても、基礎あるというか概念が分かっているだけでも助かることもあります。
以前開発より手前の研究段階の案件で、実験要員として働いたことがあります。
業務は研究者の下について、実験装置を用意したり実験したりといった内容。
「このワークを保持する治具がほしい」「こういう負荷をかけたい」とか指示が来るので研究内容そのものを深く理解する事は別に求められません。
でも意味不明のままでは気持ち悪いし、段々付いていけなくなります。
ちなみにレーザ加工関連だったんですけど、入った直後は研究内容なんかチンプンカンプンです。
光学を学んだ事もありませんし、研究員の方の議論は口をポカーっと開けっ放し状態でした。
でも試験で初歩的な物理や科目「熱工学」を勉強していたことで、光学の書物を手に取っても概念を理解できて、実験時にちょっとした提案もできるようになりました。
図面を描くとき
そしていざ自分が設計したものの図面を作成するとき。
役に立つのは出題科目の「機械製図」です。
社内の過去図面をみてトレースしていても、なんとなく製図ルールは覚えられるかもしれません。しかし公式なルールは知識として蓄えておくべきだと思います。
都度便覧を見てもいいんですけど、勉強して試験を受ける事で知識が固まるのが良いですね。
但し、機械設計技術者試験3級には実技がありません。より手を動かしたい人は技能検定もお勧めです。
さいごに 深掘りの足掛かりになる
設計資格のメリットは、学校へ通うのに比べて短期間で全体を広く浅く俯瞰することができること。
そして、資格の威光というよりは出題範囲がカリキュラムになるのがうれしい。
転職や異動になると、同じ職種でも扱うものが変われば使う知識分野も違ってきます。
そんなときに「浅くても広い基礎知識」と試験で培った「勉強の習慣」があれば、深掘りの足掛かりになります。
大人になってから、いきなり勉強を生活に取り込むのは難しい。
各々の生活スタイルや事情がありますし。
資格対策で机に向かう環境を作ったことで、勉強を生活に取り込めたのも収穫です。