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簡易な計算でも、設計時にやっておくと根拠になる。参考例を紹介します



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簡易な計算でも、設計時にやっておくと根拠になる。直感よりも管理が楽です

お問合せを頂いたので、回答を記事にしました。

先日、お問合せフォームから記事のリクエストを頂きました。

頂いたお題の概要は、こんな感じです。

  • 機械工学(計算など)と設計がつながらないので、参考例をあげて、説明してほしい。(どのように設計するといいのか、日頃どのように設計しているのか)
  • または、参考になる本があれば知りたい。


私の場合、「業務で大学教養以上レベルの数学を毎日駆使してゴリゴリ解析している」というような環境ではないので、あまり高度に難しい事は言えません。

しかし「そろばん的に普段使いとして」だったら、日常的に業務で計算して、機械工学の参考書で勉強した事を活用しています。

というわけで、その方向で回答記事を書いてみました。

計算と設計がつながった例

設計の過程で計算をした例を挙げてみます。
もちろん他にもいろいろありますが、ひとまず2例思いつきました。

市販アクチュエーターをつかう

モーターやシリンダーなど、何らかのアクチュエーター(駆動源)が必要になったら。
かかる負荷を計算で見積もり、余裕のあるモノを選定せねばなりません。

たとえば、前にエアー駆動のターンテーブルを使うことがありました。

載せるワークの質量や載せ方、揺動のスピードから、慣性モーメントや角加速度を計算してトルクを出していきます。
メーカーのカタログに詳しく選定手順が書かれている事もあり、スムーズに進みました。

でも、資格試験などで機械工学を勉強していなかったら、私の場合は困っていたはずです。
カタログ記載の数式が頭に入ってこないでしょうし、混乱したと思います。

勉強したことがつながったぁ~と思いました。

機械要素を使う

歯車やベルトなど色々な機械要素がありますが、例としてネジを使った簡単な検討の流れを紹介します。

こんな感じのジャッキ的なものを作ることにします。
六角の頭にワークを載せて、レンチなど棒を入れて頭を回すと、ワークが上下するというような仕組み。

ワーク質量は5kgとします。

2018/5/5:はてブコメント欄でご指摘を頂いたので、補足しました。
「バランスが悪いことと、レンチが曲がってしまう」可能性のご指摘を頂きました。ありがとうございます。

たしかに、問題簡素化のために現実感のない設定になってます。
  • この通りに使うと、ワークがバランス崩して落ちてしまいます。
  • また、画像のようにレンチで回すなら、ハンドルとしての太さも考慮せねばなりません。(レンチではなく専用のレバーを用意するなど)
ちなみに似たようなものを作った際は、4点でワークの姿勢を微調整し、スパナで調整していました。
あくまで例題なので実際の運用にはご注意下さい。

簡易なものなので、ネジはメートル並目ネジ(三角ネジ )を使います。
ぶっちゃけこの程度なら適当でも良さそうですが、課題にしました。

これの、ネジの噛み合い長さ(=板厚)を検討してみます。

1. ネジを仮決め

使うネジは、M5に仮決めします。

  • ネジサイズ:M5×0.8
  • 谷の径d1:4.134mm
  • 有効径d2:4.48mm
  • 材質:S45C

仮決めの理由は、まぁ大きさ的に手ごろかなーです。
計算で問題が出れば、修正していきます。

2.  必要トルクを求める

まず、5kgのモノをネジで持ち上げるのに、必要なトルクを求めます。

ネジが荷重を持ち上げるのに必要トルクを求める


3. ねじり応力と圧縮応力を求める

トルクがかかるということは、ねじられるという事になり、ねじり応力がかかります。
それと、頭に荷重がかかっているので圧縮応力も発生します。

とりえあず、両方計算します。

ねじり応力と圧縮応力を求める

4. 相当応力を求める

一つの軸(ネジ)に二つの応力が発生しています。
こんな時は、モールの応力円を描いてみます。
計算すると面倒ですが、CADなららくちんです。

ちなみに、モールの応力円については、別途記事を書いています。

主応力が出ました。これがネジにかかるものとして扱います。

ただ、あとで参考書を読んでいると、主応力ではなく応力円の直径を軸応力として扱う解説*1がありました。

もう疲れたので、主応力で進めてしまいます。

モールの応力円を使う

*1:三田 純義ほか(2000) 『機械設計法』 コロナ社, p81 4.9.3


6. 板厚を求める

やっと板厚が見えてきました。

この場合は締結ではなく移動なので、面圧を考慮します。
ネジ径の円から谷の円の面積を引いた、ドーナツエリアで荷重を支えるという考え方で計算します。

許容接触面圧力は、機械工学便覧に記載の表*2から適当に決めました。

ネジで荷重を支える板厚を求める

ネジで荷重を支える板厚を求める

あとは、計算値以上のキリのよい寸法に決めて終了です。
板厚が厚すぎるなら、ネジ径をかえたりパラメーターを調整していきます。

こう書くとダラダラと長いですが、実際はエクセルで適当にタカタカっと計算が完了します。
すべて、機械工学の勉強中に出てくる基本公式の組み合わせです。



*2:日本機械学会(2005)『機械工学便覧β4 機械要素・トライボロジー』日本機械学会, p13 表I-2・5

7. 参考文献



テキストメモレベルでも、計算書を書いておくと根拠になる

簡易な装置など、一見正式な設計計算書がいらないような案件があるかもしれません。
でも私の場合は、どんな細かい案件でも一度でも計算する事があれば、簡単に計算書を作って記録しています。

とはいっても、特別なものではなく、テキストエディタやエクセルを使ったメモがきレベルです。
しかしこれがあると、

  • 後から改造する
  • 何か問題が起きて原因を追う

・・・などの必要が出た際にとても役に立ちます。

設計の根拠があいまいだと、後が大変です。
自分自身もですし、人に引き継いだり引き継がれたときに困ることになります。
悪いのはインプット(設計)なのかアウトプットなのか(手配、加工ミスetc)が分かりづらくなってしまいます。

Markdown(マークダウン)で書いておけば、見やすいのでお勧めです。

秀丸やMeryなどのテキストエディタでは、Markdownの文法で書いた文章を色分けしてきれいに表示できます。(事前設定が必要です)

こんな感じ。

Markdownで設計書

参考)Markdownについてはこちらをご覧ください。

機械工学は開かれた万人のツール

私がだいぶ前にいた職場では、計算よりも経験則が尊ばれていました。
寸法などは直感で「えいや」と決めて、実物が出来た時に問題なかった人が勝ち、みたいな感じです。

社歴の浅い私は、困りました。
感覚を共有していないので、過去の図面を見ても設計の根拠がわからないからです。
(根拠を聞きたくても記憶が不確かだったり、退職で当時の設計者がいない……などで暗中模索状態)

そんな時に役立ったのが機械工学です。
年齢に関係なく使えるツールですし、記録に残せば誰にでも伝わる共通言語として根拠を示せます。

機械力学や材料力学の初歩レベルでも直感で適当に決めるよりは再現性があり、あてずっぽうよりは精度の高い見当がつけられると思います。

おすすめ資料

自分の設計とまったく同一な本はないので、構造を切り分けて単純にモデル化して、計算する事になります。
そんな時に役立つのが、参考書の演習問題です。

収録問題が多いので、何かしら類題というかヒントを得られることが多いです。
解説もそこそこ詳しいので好きな本です。
資格試験の過去問を解くのにも役立ちましたし、実務上の計算で詰まったらパラパラとみています。

機械設計で一通り必要になる基本的な計算や考え方が、ぎゅっと詰まった本です。
式の導出も丁寧なので、基礎学力に自信がない自分でも割とスムーズに読めました。

ネット

色々な機構の設計例を見られます。
簡単ではありますが、計算根拠も示されているので参考になります。

全て鵜呑みで完成というようなケースは少ないですが、例を見られるだけでも構想の助けになります。
見てるだけでも楽しいです。



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